2024-04-01から1ヶ月間の記事一覧

福田村事件('23)   則るべき道理が壊れゆく

1 「あなたは、いつも見てるだけなのね」 1923(大正12)年 千葉県 東葛飾郡 福田村 日本統治下の京城(けいじょう/現在のソウル特別市)で教師をしていた澤田智一(以下、澤田)が妻の静子と共に故郷の福田村に帰村してきた。 彼の目的は教師を辞め…

僕たちは希望という名の列車に乗った('18)   自ら考え、行動し、飛翔する若者たち

1 「ハンガリーのために黙祷しよう」 東西ベルリンの境界駅 1956年 ベルリンの壁建設の5年前 東独スターリンシュタット(現アイゼンヒュッテンシュタット)に住む高校生のテオと親友のクルトは、西ベルリン・アメリカ占領地区行きの列車に乗り、検問を…

集団と化した時に極大化する人間の脆さ 「関東大震災朝鮮人虐殺事件」が抱え込む深い傷跡

1 自警団という絶対的加害者の悍ましさ 「橋を渡って一町ほど行くと 朝鮮人が日本人に鉄砲で撃たれた 首を切られたのも見た」 「クローズアップ現代」(「集団の“狂気”なぜ ~関東大震災100年“虐殺”の教訓~」より)で紹介された東京・本所区横川尋常小…

ソフト/クワイエット('22)   レッドラインを越えていく女たち

作り手の覚悟・胆力が映し出す、全編ワンカットの圧巻の90分間。 以下、梗概。 1 「毎日妻に軽蔑されたい?…男なら勇気を出して礼儀を教えてやるの」 幼稚園教師のエミリーは、トイレに入って妊娠テストをする。 「お願い。今度こそ…」 しかし、またも不…

ニトラム/NITRAM('21)   「自分が何者であるのか」という問いを立てる力

1 「2人で行きたい。本物の家族みたいに」 ロイヤル・ホバート病院、熱傷センターで入院する子供たちにテレビのレポーターがインタビューをする。 「君はどうして火傷を?」 「ええと、寝室に上がっていく時に、ライターで火をつけてみたくなったんだ。打…