2012-09-11から1日間の記事一覧

冬の小鳥('09)  ウニー・ルコント  <「反転の発想」によって駆動していく少女の、極めてポジティブな身体疾駆>

1 開放された門扉の向こうへの遥かなるディスタンス 少女が大人たちの止めるのも聞かず、施設の門柱の上に乗った。 寮母が少女の脚を捕捉しようとしたが、身軽な少女にかわされてしまったのだ。 不安げに事態を見詰める施設の子供たち。 「子供たちを中に。…

ピアノ・レッスン('93)  ジェーン・カンピオン <男と女、そして娘と夫 ―― 閉鎖系の小宇宙への躙り口の封印が解かれたとき>

1 自然と睦み合う旋律と一体化した女、それを凝視する男 ―― 浜辺のシークエンスの決定力 幼少時より言葉を失った女は、非社会的で閉鎖系のミクロの宇宙に住んでいる。 そんな女が嫁ぐために、ニュージーランド南端に浮かぶ「異界」の島にやって来ても、そこ…

竹山ひとり旅('77)  新藤兼人   <「目明きは、汚ねえ!」 ―― ラスト20分の爆轟の突破力>

1 「目明きは、汚ねえ!」 ―― ラスト20分の爆轟(ばくごう)の突破力 〈生〉を絶対肯定するエピソード繋ぎだけの前半の冗長さから、ラスト20分で爆発する「反差別」へのシフトが劇的であっただけに、映像構成の些か不安定な流れ方が気になったが、〈生…

川の底からこんにちは('09) 石井裕也   <「深刻さ」を払拭した諦念を心理的推進力にした、「開き直りの達人」の物語>

1 「開き直った者の奇跡譚」という物語の基本骨格 本作の物語の基本骨格は、「開き直った者の奇跡譚」である。 「開き直った者の奇跡譚」には、物語の劇的変容の風景を必至とするだろう。 独断的に言えば、物語の劇的変容の風景を映像化するには、コメディ…