日記

スポーツの風景 「スポーツ科学のエビデンスを根源的に失った『昭和の野球』の欺瞞性」より

1 極端な体育会系精神主義に収斂される「御意見番」張本勲 ―― 「壊れても当然」と言い放つ男の愚昧の極致 「確証バイアス」・「サンプリング バイアス」等々の複数の理由で、TBSの「サンデーモーニング」には、どうしても馴染(なじ)めないが、言論の自…

人生論的映画評論・続あの夏、いちばん静かな海。('91) 北野武 <「台詞なき世界」、「生命線としての音楽」、「死の普遍性」について>より

<「台詞なき世界」、「生命線としての音楽」、「死の普遍性」について> 1 「台詞なき世界」について この映画のキーワードは3つある。 「台詞なき世界」、「生命線としての音楽」、「死の普遍性」である。 まず、「台詞なき世界」について。 「障害者は…

「皇室草創」 ―― 両陛下が、今、思いの丈を込めて始動する

1 「人生脚本」を革命的に「再定義」した魂が打ち震えていた 有能な親から、有能な子供が生まれる。 必ずしも当たっているとは言えないが、教育熱心な分だけ、「オーバーケア」(過保護)の性向を否定できないが、子供の自立性を剝奪(はくだつ)する「過干…

心の風景「『覚悟の一撃』 ―― 人生論」より

突入するにも覚悟がいるが、突入しない人生の覚悟というのもある。覚悟なき者は、何をやってもやらなくても、既に決定的なところで負けている。その精神が必要であると括った者が、それを必要とするに足る時間の分だけ、自らを鼓舞し続けるために、「逃避拒…

「時間」の心理学

1 「内的時間」の懐の此処彼処に、「タスク」への問題意識を詰め込んでいく 「存在」とは何か。 「自由」とは何か。 「生きる」とは何か。 「人生」とは何か。 「人間」とは何か、等々。 唐突に聞かれても、軽々(けいけい)に答えられない人生の難問につい…

「川崎殺傷事件」 ―― それを囲繞する空疎な風景への苛立たしさ

1 「自分一人で死ね」派の激発的情動言辞の風景 ―― その情報爆轟の「疑似ロゴス」 「この事件を見てる日本中の子供を持った親御さんは、どうやって子供を守ったらいいと、ただただ恐怖なだけで防ぎようがない。いつどこで何が起こるかわからない。一人の頭…

私たちはいつだって愚かであり、不完全である

1 人格総体を差配する自我の資源は枯渇する 「人間の愚かさの本質」について言及する。 目覚しい学問的発展を遂げている生物学の現状だが、生命現象のメカニズムの解明については、一貫して、説明不明瞭さを克服すべき課題になっている。 数理的手法を用い…

<「我々だけが正義である」という、「絶対正義」の心地良き「物語」>

1 「絶え間ない悲鳴に、耳を貸さぬ我々がいる」 ナチスの台頭で米国に亡命し、その後、東独に生活の拠点を設け、東独の国歌をも作曲したユダヤ人、ハンス・アイスラーが作曲した、詩的でありながら、時には軽快で、淀みのないBGMに押し出されるように、…

「万世一系」という究極の「物語」

1 「ヤマト王権」の天皇像 ―― 「記紀」の「物語性」・「文学性」のインテンシティ 古くは「すめらき」・「すめらぎ」と呼ばれ、また、日常語に近い「大王」(おおきみ)か、儀礼的な意味を持つ「スメラミコト」とも呼ばれていた「天皇」という用語が、一般…

人生はどんな状況でも意味がある

1 「言語を絶する感動に震える名著」と出会った衝撃が人生を変える 「私たち同じ人間が、同じ人間に対してこんなにも残酷になれるのか!」 その「非道さに、怒り、震え」た。 某ブロガー氏の文章の一部である。 「ある日、何かのきっかけで何気なく読み始め…

近親姦の性暴力の圧倒的破壊力 ―― 「状況限定性」に押し込まれた「絶対的弱者」

1 「世間」という名の、他人の視界を遮断し、出口が塞がれ、ロックされていた 名古屋地方裁判所岡崎支部での「無罪判決」。 当該裁判長が下した、信じ難い「無罪判決」が、ネット、メディアを通じて、今なお物議を醸している。 問題は、「名古屋地裁岡崎支…

「世界最大の民主主義国家」 ―― 遥かなるインド・その〈現在性〉

1 「国民のために身をささげる。旅はいま始まった」 インドや東南アジアで、雨季を意味する「モンスーン」(季節風)の気候下にあるエリアを 「モンスーンアジア」と呼ぶ。 湿潤な地域が広がる「モンスーンアジア」は、格好の水稲栽培地帯になっていて、多…

人生論的映画評論・続「ライフ・イズ・ビューティフル」ロベルト・ベニーニ <究極なる給仕の美学>より抜粋

1 「お伽の国」での軽快な映像の色調の、反転的変容 一人の陽気なユダヤ人給仕が恋をして、一人の姫を白馬に乗せて連れ去った。 映画の前半は、それ以外にない大人のお伽話だった。 お伽話だから映像の彩りは華やかであり、そこに時代の翳(かげ)りは殆ど…

「状況が歴史を動かす」 ―― 「731部隊」とは何だったのか

1 「生理学的実験」を遂行した途轍もない破壊力 かつて、「防疫給水部」(ぼうえききゅうすいぶ)と呼称される専門部隊が、大日本帝国陸軍の組織系統の中にあった。 「防疫給水部」とは、文字通りの意味で、疫病対策と浄水の確保を維持し、ライフラインの整…

男の虚栄が崩されていく

1 「欲望自然主義」の知覚系の炸裂と、女たちの「生活合理主義」のフルスロットル 男の虚栄の推進力が、今や、明らかに衰弱してしまっている。 戦後の高度成長期が一段落し、人々の生活が人並みの豊かさを手に入れることで、この国の人々は、私権の拡大的定…

季節のアルバム 「埋め尽くされた春の彩りが『全生園』を包み込む」 2019・4

今年も、多磨全生園に春がきた。 今年の全生園もまた、サクラの美しいラインが群れを成し、都内の名所に負けないように、園全体を包み込んでいた。 ライムグリーンの彩りが鮮やかな広場にある施設の中に、お食事処「なごみ」がある。 映画「あん」を契機に、…

障害者の「全人格的な生存権」と、「人間の尊厳」の完全破壊の悍ましさ

1 「意思疎通がとれない人間を安楽死させるべきだと考えております」 2016年7月26日未明、その事件は起きた。 事件の現場は、自治体の施設運営を民間委託する「指定管理者制度」を導入した、「津久井やまゆり園」という知的障害者福祉施設だった。 …

戦後の裏面史としての「幸福競争」の時代

1 古いものより、少しでも新しく、その時代にジャストフィットする文化的悦楽 「映画の鬼」とも言うべき、精力的な表現作家として知られる故・新藤兼人監督の代表作の一つに、「裸の島」という傑作がある。 久しぶりに、台詞のない本作をじっくり鑑賞した。…

「健康」とは基本的人権である

1 「日本」という名の、「社会主義国家」の無頓着な安寧感 日本の医療の特徴は、社会の構成員全員に医療及び、医療費補助を提供するという、「ユニバーサルヘルスケア制度」=「国民皆保険」と、自らの判断で自由に病院を選べる「フリーアクセス」にあると…

「サッチャリズム」とは何だったのか

第二次大戦後,イギリスは労働党政権下で、石炭,電力、鉄鋼、鉄道、自動車産業、道路輸送などを国有化した結果(産業国有化政策)、国際競争力を失って、輸出が減少し、輸入が増加する事態を招来していく。 当然の如く、貿易収支は悪化していき、ポンドは切…

「ロヒンギャ難民」 ―― 爆裂する破壊的暴力が抱える問題の複雑さ

1 「ビルメロ」の感傷が、現実の歪んだ政治状況の渦中で掻き消されてしまっている 一貫して、自由主義者のスタンスを堅持したドイツ文学者・竹山道雄の児童文学の秀作を、市川崑監督によって、2度に及び映画化された名作・「ビルマの竪琴」は、「お涙頂戴…

ジム・ジャームッシュ監督の世界

ジム・ジャームッシュの奇跡的傑作である「ストレンジャー・ザン・パラダイス」の評論を擱筆(かくひつ)した後、暫くして、私は偶然にも一冊の著書と出会う機会に恵まれた。 その本の名は、「JIM JARMUSCH INTERVIEWS 映画監督ジム・ジャームッシュの歴史」(ル…

「高校野球の悪」 ―― 「タブー」に挑む筒香嘉智の正義の炸裂

1 我が国の「野球」の歴史に風穴を開けた男 2019年1月25日。 「公益社団法人日本外国特派員協会」=「外国人記者クラブ」でのこと。 「外国人記者クラブ」とは、マッカーサーの命令一下、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)より認可され、連合国…

非言語コミュニケーションが異文化交流の困難さを突破する

1 非言語コミュニケーションのメッセージ性の豊富さ ヘブライ語を全く話せない他国の中東民族が、ヘブライ語を話せる「アラブ系」が定住する国家=イスラエルにやって来て、英語という、言語コミュニケーションというツールによってのみ補填していく、一本…

「自分が見たものが全て」という、視界限定の狭隘さ

1 物事を「単純化」し、「感覚的処理」によって状況を読み解き、分かったつもりになる 溢れ返るほどの情報群の中から、一定の情報を特定的に取り出して認知すること。 この認知機能を、認知心理学のフィールドで「選択的注意」と呼ぶ。 そもそも、私たち人…

それでも、グローバル化は止められない

1 現代史的「グローバリゼーション」の、その革命的な「グレートローテーション」 「地球は狭くなった」 まるで、この「地球規模化」の標語の如く、「グローバリゼーション」の激動が「経済・政治・社会」の連合体のように印象づけられたのは、資本自由化に…

ホラー映画とは何か

1 ホラー映画の王道から逸脱した不条理ホラーの独立峰 観る者に「恐怖感の享受を予約」する映画 ―― 狭義に言うと、私はそれをホラー映画と呼んでいる。 だから、残酷描写を売り物にするスプラッターが、広義のホラー映画に含まれることを認めても、必ずしも…

意見が変わるのは悪いことなのか

1 「私の意見」の初発点で拾い集められなかった情報価値が、「ストローク交換」の収斂過程で修正されていく 一般に、意見や態度が見境なく移り変わるのは、好ましくない現象と言われる。 その浅慮(せんりょ)の故に、脇が甘いと思われるのだ。 「見境なく…

「アルビノ狩り」 ―― その言語を絶する凄惨さ

1 「サブサハラ」の多様性と「文化的特異性」 2016年段階で、約12億5600万の人口を有し、54カ国が集合する大陸がある。 世界最大の砂漠・サハラ砂漠で、大陸を大きく二つに分けるアフリカ大陸である。 このサハラ砂漠を境界点にすれば、イスラ…

自分の才能を見つけるという「能力」の難しさ

1 自分の才能を見つけるという「能力」の難しさ 人間は滑稽な生き物である。 社会的適応を果たす上で最低限必要な情報を手に入れ、その情報を駆使する相応の能力を持つことで、一定の「地位」と「収入」を得ることに成就したとき、その成就のインセンティブ…