#小説
一 私はかつて一度、自死の恐怖の前に立ち竦んだ。 自死へのエネルギーをほんの少し残しながら、それを他の行為に転化することができたことで、何となく救われた。その恐怖はその後、私の脳裏にべったりと張り付いて決して離れることはなかった。 以来私は、…
一 地の底から見る風景は、過剰なまでに絶望的だった。 中枢性疼痛という地獄の前線で噛まれて、私だけの悶絶の仕方で、あらん限りの醜悪を晒していた。そこに崩壊感覚としか呼べないものが蟠踞している。壊れゆくものの恐怖感。そいつが私を喰い尽くそうと…
一 ほんのひと押しの揺らぎで崩れてしまうような、ちっぽけなガラスの秩序。そこに私は棲んでいる。 気晴らしに向かうどのような気分の集合がどれほど威勢よくても、その気分を乗せている辛いものの集合がほんの少し暴れ出したら、もう澱みきったものの淵に…