2011-03-15から1日間の記事一覧

オアシス('02) イ・チャンドン   <「オアシス」という名の削られた日常性>

イ・チャンドン監督自身のメッセージ。 「『オアシス』は境界線についての映画ともいえます。自分と他人との間の境界、自分たちと忌むべき相手との間にある境界、あるいは『普通の』人たちと『障害をもった』人たちとの間の境界。あるいはまた、『愛』と呼ば…

ルイス・ブニュエルの黄金時代('30) ルイス・ブニュエル  <確信的涜神者の挑発的信管投入>

映像の冒頭に、サソリの生態のシーンが描かれて、説明書きまで加わっていた。 「魚の浮袋に似た6連の尾を丸め、対象物を刺して、液状の毒を放つ。孤独を好み、侵入者は断固として排除する。その芸術的とも言える素早い攻撃は、鼠さえ仕留める」 その直後の…

タクシーブルース('90)  パーヴェル・ルンギン <「緩やかな権力関係」の形成と自壊の構造 ―― 「ペレストロイカ」という名の文化革命の振れ方の中で>

1 選択肢の幅を広げてしまう当惑と恐怖 ―― 私権と自由の幅の拡大的定着のアポリア 自由を大幅に制限する特殊な国家に呼吸を繋ぐ人々にとって、その状況を特段に疑問視することがない時代の海と睦み合うとき、そこに住む人々にとって、それはごく普通の社会…