2012-05-09から1日間の記事一覧

マイ・バック・ページ('11) 山下敦弘 <相対化思考をギリギリの所で支え切った、表現主体としての武装解除に流れない冷徹な視線の肝>

1 「革命」という甘美なロマンによって語られる、それ以外にない最強の「大義名分」を得て 「革命」という言葉が死語と化していなかった時代を、「幸運な時代」と呼んでいいかどうか分らないが、そんな時代状況下にあって、「世界の動乱」を鋭敏に感受し得…

松ヶ根乱射事件('06) 山下敦弘 <「アンチ・ハリウッド」の気概すら感じさせる、切れ味鋭い映像の「自己完結点」>

1 「日常性のサイクル」の恒常的な安定の維持の困難さ 刺激情報をもたらす外気との出し入れが少なく、それなりに「自己完結的な閉鎖系の生活ゾーン」では、そこで呼吸を繋ぐ人々の多くは、「日常性のサイクル」を形成しているだろう。 因みに、「日常性」と…

天然コケッコー('07) 山下敦弘 <「リアル」を仮構した「半身お伽話の映画」>

1 「思春期爆発」に流れない、「思春期氾濫」の「小さな騒ぎ」の物語 島根県の分校を舞台にした、天然キャラのヒロインの、純朴で心優しきキャラクターを、観る者に決定付けた重要なシーンがある。 天然キャラのヒロインの名は、右田そよ(以下、そよ)。 …

リンダリンダリンダ('05) 山下敦弘 <「青春映画の王道」を相対化し切った映像の独壇場>

1 「困難な状況下の、苛酷な努力による『仲間の再生』」という文脈の暑苦しい臭気を蹴飛ばして 観る者に、冒頭から見せるのは、校内の廊下の長回しのシーンによる、学園祭の準備風景。 既に、この作品が、「学校生活」という退屈極まる〈日常性〉の中の、「…