2013-07-07から1日間の記事一覧

西部戦線異状なし(‘30) ルイス・マイルストン <塹壕戦の地獄という「戦場のリアリズム」の凄惨さ>

1 「大義なき戦争」の空白から洩れる情動にインスパイアされた若き「戦士」たち シュリーフェン・プランという、第一次世界大戦前のドイツが策定していた計画がある。 フランスとロシアから東西を挟み撃ちにされたドイツが、この状況を打開するために、フラ…

戦場にかける橋('57) デヴィッド・リーン <予測困難な事態に囲繞される人間社会の現実の怖さ>

1 本作への様々な対峙のスタンス まず、書いておきたいのは、この映画を批評する際に、史実との乖離とか、日本軍の「武士道精神」を体現したとされる斉藤大佐の描き方や、「人間らしく生きることが一番簡単なのだ」という信条を持って、収容所を脱走するア…

ハート・ロッカー('08) キャスリン・ビグロー <「戦場のリアリズム」の映像的提示のみに収斂される物語への偏頗な拘泥>

1 「ヒューマンドラマ」としての不全性を削り取った「戦争映画」のリアルな様態 テロの脅威に怯えながらも、その「非日常」の日常下に日々の呼吸を繋ぎ、なお本来の秩序が保証されない混沌のバグダッドの町の一角。 そこに、男たちがいる。 米陸軍の爆発物…