2011-02-10から1日間の記事一覧

名画短感⑥ 人情紙風船('37)  山中貞夫監督

時代劇といえば、戦後の東映のオハコの娯楽映画のエース。 しかし、長屋の住人の脳天気さという印象を相対化させてしまう程に、ここに描かれる際限なく陰鬱な江戸期の人々の描写のイメージは、まもなく前線に放り込まれる運命にあった27歳の青年監督の、そ…

太陽はひとりぼっち('62) ミケランジェロ・アントニオーニ <ラスト9分間に及ぶ、無言のシークエンスの決定力>

原題は「L’ECLIPSE」。 「月食」、「日蝕」という意味である。 カンツォーネの代表的女性歌手である、イタリアのミーナ・マッツィーニが歌う、軽快な邦題通りの主題歌から、クレジットタイトルが刻まれる途中で、唐突に、暗鬱な不協和音が流れてきた直後の映…

勝手にしやがれ('59)   ジャン=リュック・ゴダール <「破壊」という極上の快楽>

吐瀉物の如く吐き出される、殆ど内実を持ち得ない会話に象徴されるように、その「革命性」が注目された「物語性の曖昧化」によって、寧ろ、そこに炙り出されてくるイメージは、男の人生の刹那主義であると言っていい。 刹那主義とは、「今、このとき」の快楽…