2011-02-18から1日間の記事一覧

冬の光('62)  イングマール・ベルイマン <物語に縋って生きる「職業的牧師」の欺瞞と孤独>

1 「職業的牧師」という名の、一人の「凡俗の徒」 本作の主題は、拠って立つ自我の安寧の基盤である物語に亀裂が入ってもなお、その物語に縋って生きていかねばならない男の欺瞞と孤独である、と私が考えている。 物語とは、キリスト教への深い信仰の念であ…

ハワーズ・エンド('92) ジェームズ・アイヴォリー <「異文化間の葛藤・対立」の極点であると同時に、その調和の象徴としての「ハワーズ・エンド」>

1 異なった文化を持つ者たちの階級社会の縛りの中で かつて高度経済成長下で、長屋住まいの我が家の父母が、何かのアンケート調査で、自分たちの生活レベルを「中の下」などと記したことでも分るように、当時、大半の日本人は自らの生活レベルを、「ミドル…