2011-04-01から1日間の記事一覧

バベル('06)   アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ <「単純化」と「感覚的処理」の傾向を弥増す情報処理のアポリア>

1 独善的把握を梃子にして振りかぶった情感的視座 モロッコで始まり、東京の超高層で閉じる物語。 モロッコに旅行に来たアメリカ人夫婦は、関係の再構築のために旅に出て、そこで難に遭う。 東京の超高層に住む父と娘は、関係の折り合いが上手に付けられな…

夏の夜は三たび微笑む('55) イングマール・ベルイマン <「非本来的な関係」の様態がシャッフルされたとき>

1 「夏の夜の三度目の微笑よ」 ―― 物語の梗概 「自分の家が、時々、幼稚園に思える」 こんなことを吐露するフレデリック・エーゲルマンは、中年弁護士で、現在19歳の若妻アンとセックスなき生活の代償に、かつての恋人で、女優のデジレへの思いが捨て切れ…

ぼくの伯父さんの休暇('52) ジャック・タチ<「ストーリー性の欠如」と「ペーソス」の剝落―「脱風刺のスラップスティック的ギャグ」の洪水の宿命>

1 「時代の限定性」の壁を突き抜けて、「普遍性」を持ち得る「笑い」の困難さ この映画を観ていて、つくづく感じ入ったことが2点ある。 一つは、「チャップリン映画」が如何に抜きん出ていたということ。 もう一つは、人を「笑わせること」が如何に難しい…