2011-04-07から1日間の記事一覧

落ちた偶像('48) キャロル・リード <複雑な〈状況〉の中に放り投げられ、置き去りにされた少年の悲哀>

1 秘密を守る少年 舞台は、ロンドンの某国大使館。 大使が療養中の夫人を迎えに行って、寂しい思いの息子は退屈を持て余す。 息子の名は、フェリップ。 フェリップ少年は、敬愛する執事のベインズの話を聞くのを楽しみしているが、肝心のベインズは、ヒステ…

名画短感② 北京好日('92)  寧瀛 (二ン・イン)監督

1 老境の日々のアイデンティティ 「老境の日々のアイデンティティ」を、いかに確保するか。 この永遠のテーマを、難解な文脈でカモフラージュしながら、訳知り顔の独善性を厚顔にも晒すという過誤を犯すことなく、普通の老人の等身大の視線によって能弁に語…

名画短感④ 天国の日々('78)  テレンス・マリック監督

際立つ映像美によって、最も印象に残る映画。 とりわけ、自然の情景描写が抜きん出ていて、殆ど溜め息が出るほどだ。 見渡す限りの大農場には、黄金色の麦の穂が大きく揺れ、遥か地平線の向うでは、日没の赤がいつもと変わらぬ律動性の中に燃えている。朝靄…