2011-04-08から1日間の記事一覧

名画短感③ 恋恋風塵('89)  ホウ・シャオシェン監督

1 一級の「失恋映画」 ホウ・シャオシェンの「恋恋風塵」は、一級の「失恋映画」である。 その表現力、抑制の効いた描写、少年期の感性を見事に捉えた映像は特筆すべきであって、他の追随を許さないものがある。 祖父に癒されて閉じるこの静謐な映像宇宙は…

名画短感⑤ プレイス・イン・ザ・ハート('84)  ロバート・ベントン監督

観る者の感動を狙っただけの映画が氾濫する情緒過多なる時代のとば口に、かくも堅実で良質なヒューマンドラマがあったことを確認させられる一篇。 主演を演じたサリー・フィールドと、ジョン・マルコヴィッチの冴えた演技が映像的感性を濃密にしていて、最後…

近松物語('54)  溝口健二 <「峠の爆発」―ラインを重ねた者の突破力>

序 「近松ワールド」を代表する一作 「おさん」は、元禄文化が生んだ最も有名な人物の一人である。 中でも、井原西鶴の「好色五人女」の内の一人で、「おさんの巻」の主人公としてつとに名高い。勿論、「おさん」は実在の人物で、手代との不義密通の廉(かど…