奥武蔵・秩父の春(その2)

 奥武蔵・秩父の春は美しい。

 この美しさは、一定期間低温に晒され続けた花芽が年を越し、なお耐えて、漸く巡ってきた気温の加速的上昇によって、厳しい冬の季節を突き抜ける「休眠打破」の美しさである。

 それは、単に春の到来を告げるシグナルではない。

 7.2度以下の低温状態に800時間晒されて、耐え切ったナシの「休眠打破」のように、数多の植物が、「光の春・気温の春」を椀(も)ぎ取ったときの「自己肯定宣言」なのである。

 この「休眠打破」の美しさを見せてくれる、色彩豊かな奥武蔵・秩父の陽春の姿のうちに、季節の変容に対して固有の受容感度が反応する、この国に住む人々の繊細なメンタリティの在り処を見ることができるだろう。

 ここでは、紅白梅が艶やかに彩る高麗神社(高麗家住宅)。

 ヒガンザクラの高麗聖天院。

 新緑の高麗郷。

 ウメが咲く早春の武甲山

 ソメイヨシノが空を突き抜けるようにして咲く、秩父札所23番の音楽寺、等々の写真が収まっていて、全て私の絶好のビューポイントになっている。
 
 
[ 思い出の風景/奥武蔵・秩父の春(その2) ]より抜粋http://zilgf.blogspot.com/2011/07/blog-post_29.html