風景への旅(武蔵野その1)

 「越生梅林は、関東三大梅林に数えられ、約2ヘクタールの園内には、約600年前に植えられた古木を含め、白加賀、越生野梅、紅梅など約 1000本の梅の木が植えられています。毎年2月中旬から3月下旬まで梅まつりが行われ、 大勢の観梅客で賑わいます。越生の梅林は、梅園神社に九州太宰府天満宮分祀した際、菅原道真公にちなんで梅を植えたことが起源とされています」(越生町観光協会

 これが、越生梅林を紹介するホームページ。

 花梅(はなうめ)と実梅(みうめ)に区別されている梅の品種の中で、越生梅林の梅は、花の鑑賞目的である花梅ではないので、紅梅は殆どなく、多くは結実がよく品質のよい実梅なので、白梅ばかりの越生梅林だが、3月の中旬から下旬になると、この特化された一帯は、馥郁(ふくいく)たる香りを漂わせる白一色のウメの花が咲き誇り、壮観である。

 その頃には、多くの観梅客が群れを成して入園するので、梅の数に劣らないほどの人の多さに些か辟易する。

 ところが、観梅客の多くは、越生梅林の中心部の一帯にのみに集中するので、そのエリアさえ外せば、全く異質の風景が広がっていることに驚きを禁じ得ないのである。

 それも、徒歩で30分から40分ほど歩けば、疎(まば)らになった観梅客しか見当たらず、ほんの少し、梅林の高みに上って仰ぎ見る風景は、まさに、「武蔵野の春爛漫」という言葉が当て嵌まるほど素晴らしく、長閑(のどか)で穏やかな景観が飛び込んでくるのだ。

 だから私は、この梅園へ行くときは、必ずと言っていいほど、観梅客がいない辺りにまで脚を伸ばし、絶好のビュースポットを見つけ、そこにシートを敷いて、些か寒いが、奥武蔵に訪れた遅い春の情緒を存分に堪能するのである。

 越生梅林の魅力は、まさにこういうスポットにこそあるのだ、と納得させる魅力が其処彼処(そこかしこ)に充ち溢れているからである。

 そして、晩秋と言えば、何と言っても平林寺。

 素晴らしいとしか言いようがないのだ。

 「天皇、皇后両陛下は26日、紅葉で知られる埼玉県新座市の平林寺を訪問された。秋晴れの空の下、葉が真っ赤に染まったモミジを観賞しながら、境内をゆっくりと約30分間散策」

 これは、全国メディアの提携によって設立された、ニュースのポータルサイトである47NEWSに載った、2009年11月26日の記事。

 「晩秋の平林寺」の美しさに、自然に造詣の深い天皇、皇后両陛下も訪ねたくなる古刹の魅力が窺える一文である。

 紅黄葉に染まった古刹の風景は、和風庭園や入母屋造茅葺の楼門を借景にするとき、これ以上ない修行道場としての禅宗の風格を際立たせて止まないのである。(トップ画像は、越生梅林

 
[ 思い出の風景 風景への旅(武蔵野その1)   ]より抜粋http://zilgf.blogspot.com/2011/07/blog-post_28.html