2011-01-10から1日間の記事一覧

定着への揺らぎと憧憬―「寅さん」とは何だったのか

一切の近代的利器とは情感的に切れる生き方を徹底させ、渡し舟に乗り、月夜の晩に故郷を懐かしむリリシズムが全篇に漂う中、その男は純愛を貫くのである。 人々は映像の嘘と知りつつも、この架空のヒーローに深々と思いを込めていき、気がついたら、自分たち…

田舎の日曜日('84) ベルトラン・タヴェルニエ <老境の光と影――慈父が戦士に化ける瞬間(とき)>

6 映画の重量感を決定づけた老画家の語り 「田舎の日曜日」は、私にとって究極の一作と言っていいほどの作品となっている。 パリ郊外に住む老画家の邸に、長男一家と、都会の華やかな生活感覚を漂わせたような娘が訪ねて来る。 晴天の日曜日での家族の交歓…