2011-01-11から1日間の記事一覧

こうのとり、たちずさんで('91) テオ・アンゲロプロス  <“家に着くまでに、何度国境を越えることか”――「確信的越境者」の呻き>

これはとてつもなく重く、根源的な問いかけを、観る者に放つ映画である。 これほどラジカルな問題を真っ向勝負で捉えて、しかもそれを、人間の生きざまの悲哀を絡めて描き切っていく映像世界は、アンゲロプロス監督の独壇場の感がある。これは現代世界史の最…

崩されゆく『打たれ強さ』の免疫力

今井正監督の最高傑作とも思える、「キクとイサム」(1959年製作/写真)の映画評論を書き終わった後、本作の主要なテーマである、「差別」の問題と離れて言及したい由々しきテーマが、私の中で出来(しゅったい)してしまった。映像を通して、キクとい…