2011-01-30から1日間の記事一覧

普通の人々('80)  ロバート・レッドフォード <自我を不必要なまでに武装化して ――或いは、グリーフワークの艱難さ>

序 骨の髄まで生真面目な筆致で貫徹した作品 この骨の髄まで生真面目な筆致で貫徹した作品を、アメリカの著名な映画俳優が片手間で作った映画であると見てはいけない。 これは紛れもなく、一人の有能な映像作家による作品なのだ。 片手間どころか、この映像…

戦場にかける橋('57) デヴィッド・リーン  <予測困難な事態に囲繞される人間社会の現実の怖さ>

拠って立つ価値観や置かれた立場が異なり、科学技術の習熟度や、それについての把握が異なる「異文化」の中枢に、「クワイ河マーチ」のメロディに乗って軽やかに行進しながら、自分の意志とは無縁に放り込まれた英軍将校とその一隊が、人生に対する基本的価…

覚悟の一撃(短言集/状況論)

* 虐めとは、身体暴力という表現様態を一つの可能性として含んだ意志的、継続的な対自我暴力である。 最悪の虐めは、相手の自我の「否定的自己像」に襲いかかり、物語の修復の条件を砕いてしまうことである。その心理的な甚振(いたぶ)りは、対象自我の時…