2011-02-15から1日間の記事一覧

巴里の女性('23) チャールズ・チャップリン <心理描写の見事さと、ブルジョア富裕層に対する怨嗟の念>

1 心理描写の見事さと、ブルジョア富裕層に対する怨嗟の念 「この映画に私は出演していません。これは私の最初の喜劇ではない映画です」 映像冒頭で、敢えてこんな字幕を入れるほど、観る者のイメージギャップを中和化しようとする「喜劇王」チャップリンの…

散り行く花('19) D・W・グリフィス <メロドラマの「純愛性」のうちに閉じられる情感的イメージ ―― その「人間観察力」の脆弱さ>

1 DVの破壊力と、自我の形成不全の有りよう DV(ドメスティック・バイオレンス)が、現代社会の特殊な「負の産物」としての暴力ではないことを証明する一篇。 現代のように、私権の拡大的定着と人権感覚の飛躍的拡大が具現されていない90年前の社会風…

散り行く花('19) D・W・グリフィス <メロドラマの「純愛性」のうちに閉じられる情感的イメージ ―― その「人間観察力」の脆弱さ>

1 DVの破壊力と、自我の形成不全の有りよう DV(ドメスティック・バイオレンス)が、現代社会の特殊な「負の産物」としての暴力ではないことを証明する一篇。 現代のように、私権の拡大的定着と人権感覚の飛躍的拡大が具現されていない90年前の社会風…

母なる証明('09) ポン・ジュノ <「忘却の舞い」を必要とする母がいて、「狂気の舞い」に追い込まれた母がいた>

本作の中で、最も重要と思える会話を紹介する。 そこには、本作の基幹テーマとなっている、母性の過剰な包容力のルーツとも思える会話が拾われているからだ。 会話の主は、本作の主人公である母と、その一人息子。 肝心の母には、固有名詞がない。 それは、…