2011-02-27から1日間の記事一覧

浮草('59) 小津安二郎 <もう一つの小津映画のジャンダルム>

「小津ルール」と呼ばれている、小津映画の様々な映像技法がある。 最も有名なのは、ローアングル(低い位置からの仰角)の撮影技法。 その狙いは、淡々とした日常性を繋ぐ日本的家族風景を描く作品が多い作り手が、題材とするホームドラマに安定感を保証す…

終電車('80) フランソワ・トリュフォー <トリュフォーの、トリュフォーによる、ドヌーヴのための映画>

この映画のエッセンスは、ラストシーンの劇中劇に集約されるだろう。 以下、その際の男と女の会話を再現してみる。 「あなたを忘れたかったの。あなたの自尊心が私を遠ざけたの」 「あなたは新しい嘘を考えて、ここに来る」 「嘘?何のため?あの人は死んだ…

チェイサー('08) ナ・ホンジン  <チェイサーと化した民間人を、凶暴な攻撃者に変容させしめる警察機構の脆弱さ>

本作の凄いところは、一貫して、犯人のヨンミンの犯罪動機に触れるに足るような、身分・地位・学歴などの履歴や政治社会的背景に、犯罪のルーツを安直に還元させないところにある。 いつの時代でも、どのような凄惨な社会でも、ある一定の確率で、このような…