2011-03-01から1日間の記事一覧

ウェールズの山('95)  クリストファー・マンガー  <「使命感」と「戦争」、そして「同化」についての物語>

イングランドから来た二人は、地図を作るためにフュノン・ガルウの測量のために、“好色”モーガンの宿に泊まることになった。 「ウェールズに入って最初の山。村で自慢できるのは、大昔からこの山だけ。北部のような大きい山も、中部のような美しい山もない。…

母べえ('07)   山田洋次 <空砲の受難劇と化した無限抱擁の「聖母映画」>

1 無秩序な稜線を伸ばすだけの時間を晒すという脆弱性 良かれ悪しかれ、激しく沸騰する時代の息吹は、しばしばマグマのように噴き上げる、その時代に呼吸する表現作家の熱量の一次的供給源になっていくだろう。 高度成長時代下で、「家族」(1970年製作…

セントラル・ステーション('98)  ヴァルテル・サレス<感覚鈍磨させてきた「情愛」を復元させる心情変容のステップ>

序 説得力のある映像構成によって成就した秀作 本作は、善悪の感覚に鈍磨した中年女性が、父を捜し求める少年との長旅を通して、感覚鈍磨した自我が、本来そこにあったと思わせる辺りにまで、曲接的に心情変容していくプロセスを、精緻で説得力のある映像構…