2011-04-06から1日間の記事一覧

名画短感⑫  終着駅('53)  ビットリオ・デ・シーカ監督

愉悦するものの始まりが、終わりを避けられないときの苦しみに捕捉されるとき、その苦しみは、愉悦するものが大きいほど想像し難い苦しみを味わうだろう。 同時に、その「始まりの終わり」は、「終わりの始まり」として未知の時間に呑み込まれていくときの苦…

日の名残り('93)  ジェームス・アイボリー <執事道に一生を捧げる思いの深さ―「プロセスの快楽」の至福>

1 長い旅に打って出て 英米の映画賞を独占した「ハワーズ・エンド」の翌年に作られた、米国人監督ジェームス・アイボリーの最高傑作。 また前作でも競演した英国出身のアンソニー・ホピキンスとエマ・トンプソンの繊細な演技が冴え渡っていて、明らかに彼ら…

裏窓('54) アルフレッド・ヒッチコック <キャラクターイメージの「変換」という、ヒッチコック魔術の映像構成力の妙>

1 「非日常」の地平に辿り着くまでの、長く曲折的な時間の中で放たれる緊張感 本作の凄い点は、脚を骨折して、ギプスを嵌める車椅子生活を余儀なくされた報道カメラマンの、その固定された視点のみで物語を構築し得たことにある。 まさに本作は、映像の可能…