2011-08-02から1日間の記事一覧

ワン・フルムーン('92) エンダヴ・エムリン <「悲劇の連鎖」が「贖罪の物語」の内に自己完結する映像の凄味>

物語を簡単に要約すると、以下の2行で足りるだろう。 刑務所帰りの一人の男が、少年時代に犯した犯罪、或いは、倫理的に悖(もと)ると信じる行為に対する贖罪の故に、自死に流れていく暗鬱な話である。 その救いのなさに、僅かでも、予定調和のハッピーエ…

川の底からこんにちは('09) 石井裕也 <「深刻さ」を払拭した諦念を心理的推進力にした、「開き直りの達人」の物語>

本作のヒロインである佐和子は、自分は「中の下」であるという「ネガティブな自己像」で固めていた。 高度成長期の根拠の希薄な中流幻想とは異なって、「中の下」であるという、極めてリアルな把握自体、特段に問題ないが、佐和子の場合、そこに自虐的とも思…