2011-08-30から1日間の記事一覧

おくりびと(‘08)  滝田洋二郎 <差別の前線での紆余曲折 ―-「家族の復元力」という最高到達点>

雪靄(ゆきもや)の中を、自然の営為に寄り添った走行をする一台の営業車。二人の納棺師が車内にあって、不必要な会話が削られたそのシーンこそ、本作のファーストシーンであった。 その車を運転する若き納棺師のナレーションが、ダークグレーに染まる映像の…

ビヨンド・サイレンス('96) カロリーヌ・リンク <外部世界に架橋する解放感によって相対化した青春の自己運動の眩さ>

1 「音を占有する健常者の世界」の空気を濁色した、「音が剥奪された世界」の屈折的自我 「あの子が私から離れて行ってしまう」と父。 「あなたの親と同じ過ちを犯さないで」と母。 「同じ過ちって?」 「押し付けはダメ。本人の意見を聞いて」 「あの子は…