2011-10-18から1日間の記事一覧

泥の河('81) 小栗康平 <差別された者たちの、拠って立つ共有幻想の時間の悲哀を訴える映像構築力>

1 「橋の下」に住む二つの家族の交叉の中で 「もはや戦後ではない」 これは、1956年の経済企画庁編纂の「経済白書」の表題である、「日本経済の成長と近代化」の中で使われた有名な記述。 流行語にもなったこの言葉の背景には、高度経済成長の嚆矢(こ…

おかあさん('52) 成瀬巳喜男 <喪って、喪って、なお失いゆく時代の家族力>

序 母子の変わらぬ情愛 成瀬作品には珍しく慈母観音が登場する映画だが、例によってその内実は甘くない。 「秋立ちぬ」の残酷さが人為的な環境によるものであるのに対して、この作品の残酷さは自らの力で軌道修復できない不幸に起因する。遣り切れないほどの…