2011-11-26から1日間の記事一覧

秋刀魚の味('62) 小津安二郎 <成瀬的残酷さに近い、マイナースケールの陰翳を映し出した遺作の深い余情>

1 「小津的映画空間」を閉じるに相応しい残像を引き摺って 死を極点にする「非日常」を包括する「日常性」を、様式美の極致とも言える極端な形式主義によって、そこもまた、根深い「相克」や、「祭り」の「喧騒」、「狂気」を内包する「騒擾」を削り取るこ…

麦秋('51) 小津安二郎 <ヒロインの「笑み」が「嗚咽」に変わったとき>

1 小津的表現世界の確信的な習癖への違和感 自らの意志で結婚を決断したヒロインの能動的生き方と、それによって招来した三世代家族の離散の悲哀、そして何より、印象的な麦秋眩いラストシーン。 この鮮烈な記憶がいつまでも私の内側に張り付いていて、若き…