2012-01-08から1日間の記事一覧

破戒('62) 市川崑 <自己ののサイズに見合った〈生〉に反転させつつ、選択的に掴み取ろうとする男の痛切な物語>

1 「差別的原作」を屠る印象づけによって構築された物語の、感動譚の連射の瑕疵 この映画の最大の瑕疵は、物語を感動的に描き過ぎたことだ。 監修者として本作に参画した「部落解放の父」・松本治一郎(初代部落解放同盟執行委員長)への過剰な配慮が災いし…

炎上('58)  市川崑 <「絶対美」を永遠の価値とする青年僧の、占有への睦みの愉悦>

1 「汚泥した世俗」の現実を無化する自己防衛戦略への潜入 「正義」や「善」が、「不正義」や「悪」の存在によって成立する対立概念であるように、「美」もまた、その対極にある「醜」の概念によって成立する相対的概念である。 ここに、二人の青年がいる。…