2012-06-11から1日間の記事一覧

十二人の怒れる男('57) シドニー・ルメット <「特定化された非日常の空間」として形成された【状況性】>

序 プロット展開の絶妙な映像構築 「17歳の少年が父親殺しで起訴された。死刑は決定的と見えたが、12人の陪審員のうち8番の男だけが無罪を主張する。彼は有罪の根拠がいかに偏見と先入観に満ちているかを説いていく。暑く狭い陪審員室での息苦しくなる…

パピヨン('73)   フランクリン・J・シャフナー <「人生を無駄にした罪」によって裁かれる男の物語>

1 「人生を無駄にした罪」によって裁かれる男の物語 この波乱万丈に満ちた、アンリ・シャリエールの実話をベースにした映画の中で、最も重要なメッセージは、以下の言葉に尽きるだろう。 「お前は、人間が犯し得る最も恐ろしい犯罪を犯したのだ。では、改め…

JSA('00) パク・チャヌク <澎湃する想念、或いは、「乾いた森のリアリズム」>

1 澎湃する想念 ―― 立ち上げられた反米のスーパーマン 「ヒットの理由は、タブーに対する挑戦だったからだと思います。北朝鮮の人々をどう考えるかについては、強要された思考方式と、植え付けられたイメージがあった。そこから抜け出して、彼らも私たちと…

殺人の追憶('03) ボン・ジュノ <追い詰めゆく者が追い詰められて――状況心理の差異が炙り出したもの>

1 長閑な農村の連続殺人事件 「この映画は、1986年から1991年の間、軍事政権の下、民主化運動に揺れる韓国において、実際に起きた未解決連続殺人事件をもとにしたフィクションです」 この字幕から開かれた映像の内実の厳しさは、映像の展開の中で少…