2012-07-13から1日間の記事一覧

北条民雄、東條耿一、そして川端康成 ―― 深海で交叉するそれぞれの〈生〉

1 「おれは恢復する、おれは恢復する。断じて恢復する」 「人生論的映画評論」の「小島の春」の批評の中でも書いたが、北條民雄(写真)の「いのちの初夜」の中の一文をここでも抜粋したい。(なお本稿では、多くの引用文があるため、ハンセン病患者を「癩…

最高の自由

人間にとって最大の不幸とは、自分の未来を自分の意志で決定できない状況に置かれることである。人間にとって最大の幸福とは、自分の未来を自分の意志で決定できる状況に置かれることである。最大の不幸と最大の幸福は、人々が手に入れる自由度の実感による…

確信的堕落者

理想を仮構するから堕落が生まれるのである。(絵画は「イカロスの失墜」ピーテル・ブリューゲル) 理想がなければ堕落もない。堕落せし者は、常に理想を追う者の内側に共存し、対峙し、しばしば理想を蹴って闇を裂く。理想が観念なら、堕落も又観念である。…

人格変容

人は死別による喪失感からの蘇生には、しばしばグリーフワーク(愛する者を失った悲嘆から回復するプロセス)を必要とせざるを得ないほどに記憶を解毒させるための時間を要するが、裏切り等による一時的な内部空洞感を埋める熱量は次々に澎湃(ほうはい)し…

憎悪の共同体

人は自分が嫌っている者に対して、他の者も一緒に嫌ってくれることを切望して止まない厄介な側面を、多かれ少なかれ持っている。(写真はアウシュヴィッツ強制収容所) 自分がある人間を嫌うには、当然の如く、嫌うに足る充分な根拠があると確信し、その確信…

嘘の心理学

嘘には三種類しかない。 「防衛的な嘘」、「効果的な嘘」、それに「配慮的な嘘」である。己を守るか、何か目的的な効果を狙ったものか。それとも相手に対する気配り故のものか、という風に分けられよう。 「ウソの研究」(酒井和夫著 フォー・ユー 日本実業出…