2012-09-24から1日間の記事一覧

レインマン(’88)  バリー・レヴィンソン <テーマに真摯に向き合う作り手の強い意志 ――  ラストシーンの決定力>

1 「障害者映画」を免罪符にした感傷的ヒューマニズムに流れる危うさを救った、ラストシーンの決定力 この映画ほど、ラストシーンが決定力を持つ映画も少ないだろう。 ラストシーンの素晴らしさが、この映画の完成度を決定的に高めたと言っていい。 と言う…

ライフ・イズ・ビューティフル('98)  ロベルト・ベニーニ  <究極なる給仕の美学>

1 軽快な映像の色調の変容 一人の陽気なユダヤ人給仕が恋をして、一人の姫を白馬に乗せて連れ去った。 映画の前半は、それ以外にない大人のお伽話だった。 お伽話だから映像の彩りは華やかであり、そこに時代の翳(かげ)りは殆ど見られない。 姫を求める男…

ショーシャンクの空に('94) フランク・ダラボン <「希望」という名の人生の求心力、遠心力>

1 アーリー・スモール・サクセスを遥かに超えた、ビギナーズラックという最適消費点 人並みの希望を持ち、人並みの悲哀を味わって、日々に呼吸を繋ぐごく普通の人々が、その日常性の枠内で、心地良い刺激をごく普通に求めるとき、まさにそのニーズを保証す…

太陽がいっぱい('60) ルネ・クレマン  <「卑屈」という「負のエネルギー」を、マキシマムの状態までストックした自我の歪み>

1 「越えられない距離にある者」に対する、普通の人間のスタンスを越えたとき 「越えられない距離にある者」に対する、普通の人間のスタンスは二つしかない。 一つは、相手を自分と異質の存在であると考え、相対化し切ること。 例えば、「越えられない距離…