2012-12-28から1日間の記事一覧

一枚のハガキ(‘10) 新藤兼人 <「声の強さ」を具現しただけの「精神の焼け野原」の風景>

1 新藤兼人監督の「最終メッセージ」を想わせる、「絶対反戦」のテーマを内包させて描き切った物語 ―― その簡単な梗概 簡単な梗概を書いておこう。 三重海軍航空隊に徴集された100名の中年兵が、内地任務として課せられていた天理教本部の掃除を完遂した…

トラフィック(‘00)  スティーヴン・ソダーバーグ <「麻薬戦争」という名を借りた、それなしに生きられない「脆弱なる人間の在りよう」>

1 欲望の稜線が限りなく伸ばされる、麻薬の需給の接合点で 「麻薬戦争」の底なしの闇の深さを描いた本作は、物語の二人の男の言葉の中に凝縮されている。 一人は、カリフォルニアの麻薬密売人のルイス。 ルイスは、国境の街、カリフォルニア州サンディエゴ…

十三人の刺客('10) 三池崇史 <てんこ盛りのメッセージを詰め込んだ娯楽活劇の「乱心模様」>

1 「戦争」の決意→「戦争」の準備→「戦争」の突沸という、風景の変容の娯楽活劇 この映画は良くも悪くも、物語をコンパクトにまとめることを嫌い、エンターテイメントの要素をてんこ盛りにすることを大いに好む映画監督による、力感溢れる大型時代劇の復権…