2013-02-27から1日間の記事一覧

わが母の記(‘11)  原田眞人 <遺棄された、「不完全なるソフトランディング」という括りの潔さ>

1 日本的な「アッパーミドル」に絞り込んだ、「古き良き日本の家族の原風景」を印象づける物語構成 ファーストカットで、いきなり驚かされた小津映画のオマージュ(「浮草」)や、明らかに、そこもまた小津映画の影響を感じさせる、あまりに流暢で、澱みの…

アメリカン・ヒストリーX(‘98) トニー・ケイ <溶融し合うことを求めない者たちが、物理的に最近接したときの最悪の事態に流れ込んだとき>

1 「ホワイト・バックラッシュ」の攻撃性が極点に達したときの厄介な「負の状況」 かつてアメリカは、「様々な人種が、何でもそこに溶けて混ざり合ってしまう」という意味の「人種の坩堝」という用語で説明されることがあったが、今は「それぞれの人種、民…

カイロの紫のバラ(‘85)   ウディ・アレン <「夢を見る能力」のパワーの凄みが招来した「境界越え」の沸騰点>

1 「魂が打ち震える映画」に振れていく「同質効果」の心理学 私は多くの場合、辛い現実を、今日もまた引き受けていく運命から逃れられないから、自分より辛い現実を生きる物語の主人公と同化し、「疑似共有」していくために映画を観る。 今日もまた引き受け…