2013-06-23から1日間の記事一覧

先生を流産させる会(‘11)  内藤瑛亮 <ファンタジーに流れゆく剥ぎ取られたリアリズム>

1 ファンタジーに流れゆく剥ぎ取られたリアリズム 当然、こういう映画があっていい。 だが、現代の日本が抱える教育に関わる、重大な「問題提起作」という印象から乖離していて、私には大いに不満が残った。 このような映画を世に問うに足る覚悟が、作品か…

闇の子供たち('08) 阪本順治 <「象徴的イメージを負った記号」の重量感に弾かれて>

1 象徴的イメージを負った記号 ここに、6人の日本人がいる。 1人、2人目は梶川夫婦。拡張型心筋症の息子(8歳)を持ち、近々、タイで心臓移植を計画している夫妻である。① 3人目は、買春目的でタイに行き、非合法でペドフィリア(小児性愛)を愉悦し、…

羊たちの沈黙('91) ジョナサン・デミ <「羊の鳴き声」を消し去る者の運命的自己投企―― 或いは、「超人格的な存在体」としての「絶対悪」>

1 「構成力」と「主題性」、「娯楽性」、「サスペンス性」がクリアされた一級のサイコ・サスペンス 「The Silence Of Lambs」 これが、本作の原題である。 和訳すると、「羊たちの沈黙」。 この謎に満ちた原題を持つ鮮烈なサイコ・サスペンスは、立場が異な…