2013-10-25から1日間の記事一覧

愛、アムール(‘12) ミヒャエル・ハネケ <「身体表現」と「視線」との化学反応の極点が、「安寧の境地への観念的跳躍」に変換していく究極の物語>

1 数多の映画監督を周回遅れにさせる現代最高峰の映像作家 犬童一心監督の「ジョゼと虎と魚たち」(2003年製作)のように、完治なき障害を負っている者の、その日常性の現実の様態を全く描くことなく、まるで、「障害者の雄々しき自立」に振れていくよ…

白いリボン('09)  ミヒャエル・ハネケ <洗脳的に形成された自我の非抑制的な暴力的情動のチェーン現象を繋いでいく、歪んだ「負のスパイラル」>

序 忘れ難き一級の名画と出会ったときの情感の残像が騒いで こんな映画を観たいと切望して止まない映画と出会ったときの興奮と感動が、鑑賞後、何日経っても自分の脳裡に焼き付いていて離れない。 ここで提示された問題の多くは、人間の本質に関わる厄介なも…

男と女('66) クロード・ルルーシュ <「叙情」と「緊張」という二つの「視聴覚の刺激効果」を挿入する〈愛〉の揺曳>

1 「叙情」と「緊張」という二つの「視聴覚の刺激効果」を挿入する〈愛〉の揺曳 クレイジーラブやミラクルラブが溢れ返る映画に馴致し過ぎてしまうと、何とも退屈な映画にしか見えないことを再認識させられる一篇。 しかし、このような私的事情を抱える男女…