2013-12-01から1日間の記事一覧

リービング・ラスベガス(‘95) マイク・フィギス <約束された大いなる破綻と、掬い取られた純愛譚>

1 「奈落の底」に閉じ込められた男の極限的様態を描き切った傑作 登場人物の心理をフォローするようなBGMの多用に些か滅入るが、しかし、この映画は悪くない。 相当程度において上出来である。 この映画が高い評価に値するのは、女の純愛の強さが、「死…

ノーカントリー('07) コーエン兄弟  <「世界の現在性」の爛れ方を集約する記号として>

1 恐怖ルールを持つ男 個人が帰属する当該社会に遍く支持されている規範(ルール)、それを「道徳」と呼ぶ。 この道徳的質の高さを「善」と定義しても間違いないだろう。 しかしそれらは、どこまでも「やって欲しいこと」と「やって欲しくないこと」を内的…

アーティスト(‘11) ミシェル・アザナヴィシウス <男の「プライドライン」の戦略的後退を決定づけた、女の援助行為の思いの強さ>

1 今、まさに、防ぎようがない亀裂が入った「プライドライン」の防衛的武装の城砦 特定のフィールドで功なり名遂げた者が、そのフィールドで手に入れた肯定的自己像を放棄することが困難であるのは、その者が拠って立っていたフィールドの総体を否定するこ…