2014-01-18から1日間の記事一覧

カサブランカ(‘42)  マイケル・カーティス <プロパガンダ映画の厭味を感じさせない、「大人のラブロマンス」の心理的風景>

1 闇のスポットで虚しく揺曳する、運命的な再開を果たした男と女の残影 本作は、「自由と正義の国・アメリカ」という名の「パラダイス」への旅立ちと、そこでの反独レジスタンスの雄々しき継続という、「明白なる使命感」に結ばれるラストシーンに集中的に…

十二人の怒れる男('57)  シドニー・ルメット <「特定化された非日常の空間」として形成された【状況性】>

1 「特定化された非日常の空間」として形成された<状況> 「早く、片付けようぜ」 陪審員の一人のこの言葉が、評決に参加する者たちの空気を代弁していた。 「本件は第一級殺人事件だから、有罪と決まったら、必然的に被告は電気椅子に送られる」 夏の暑さ…

第三の男('49) キャロル・リード<「戦勝国」という記号によって相対化された者たちとの、異なる世界の対立の構図>

1 「闇の住人」の視線を相対化する映像構成 時代の大きな変遷下では、秩序が空白になる。 空白になった秩序の中に、それまで目立たなかったような「闇」が不気味な広がりを見せていく。 「闇」は不安定な秩序を食い潰して、いつしか秩序のうちに収斂し切れ…