環境が遺伝子を動かす

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全ての生物は約60兆の細胞から構成されている。
 
0.01mm程度の大きさを持つ細胞の中に細胞核があり、その細胞核の中に生物を形成し、生きていくための染色体がある。
 
23組46本で、2本で1組となっている染色体(そのうちの1組、2本の染色体が、女性はXX、男性はXYという性染色体)は、DNAとタンパク質の複合体である。
 
約3万2千種類と言われる遺伝子(現在では、ヒトの遺伝子は2万~2万5千個ほどに下方修正されている)とは、先祖から子孫へ連綿と伝わり、体格・骨・髪の色など身体的特徴を決定するDNA(デオキシリボ核酸という物質)の一部分のこと。
 
分りやすく言うと、「DNAは物質」(生命の設計図)で「遺伝子は情報」(設計図に詰まっている情報)であると考えればいい。
 
糸のような形をした細長い物体で、二重らせん構造をしているDNAは、その内側には塩基と呼ばれる部分が並んでいて、A(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン) 、C(シトシン)の4種類の部品でできている。
 
そして今、女優のアンジェリーナ・ジョリーが「BRCA1」(乳癌や卵巣癌を引き起こす遺伝子)遺伝子解析で、「乳がんになる確率が87%」と診断され、乳腺切除手術を行ったことで話題となったが、DNAの読み取り技術の進歩で、米国を中心に広がった、個人のDNAを解析する「遺伝子ビジネス」の存在が無視し難くなっている。
 
これは、映画「ガタカ」でも描かれていた操作的な遺伝子検査の世界と地続きではないが、今は単に、「知る」だけの遺伝子検査が、操作的な遺伝子解析に決して侵入しないという保証がない。
 
遺伝子解析ビジネスに参入する各社が、DNAを突破口に健康関連の巨大市場を、デジタルのノウハウで切り崩すことから開かれる未知のゾーンの恐怖。
 
これがある。
 
「『ガタカ』にも出てきた目の色や若禿、あるいは髪の毛の色や耳垢の乾湿などはたった1つの遺伝子にほとんど支配されています。色盲血友病など、疾病のなかにも1つの遺伝子がどのタイプかによって、生涯にそれを発病するかどうかが高い確率で予測できるものがあります。こうした性質は、双子の研究にもよらずとも、いわゆる家系図を描いてみて、幅広い親戚の間で、それがどのように伝わるかを調べることによって知ることが出来ます」(「遺伝子の不都合な真実」安藤寿康著 筑摩新書)
 
更に、由々しき問題がある。
 
全ての遺伝子の情報を、生命の設計図としての「ゲノム」と呼び、現在、全遺伝情報を意図的に操作する「ゲノム編集」の研究が急速に進展し、害虫耐性のトウモロコシなどの「遺伝子組み換え」よりも遺伝子操作を可能にすることで、「人が神の領域に踏み込んだ」と報じられ、深刻な問題になっている。
 
この技術は、ゲノムの全塩基配列を解析するプロジェクト・「ヒトゲノム計画」が、2003年に完了したことで可能になった革命的な変化と言っていい。
 
サルの実験は既に中国で遂行され、この技術がヒトに意のままに応用される可能性がある。
 
ヒトへの応用が開かれる前に、私たち一人ひとりが、それを受け入れるかどうかの議論を交わす時期に来ているのである。
 

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