韓国人は「神経症」・日本人は「心身症」 ―― その折り合いの悪さ

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1  炙り出された視界不良の歴史的状況性
 
 
遂に、ここまできてしまった。
 
「徴用工問題」と「慰安婦財団解散」の問題である。
 
両国における激しい反対運動の澎湃(ほうはい)の中にあって、朝鮮半島情勢を懸念する米国の積極的な仲介があり、1965年の「日韓基本条約」が締結されるに至った。
 
これによって、欧米列強下で「違法」ではなかった、1910年の「韓国併合」(韓国併合条約)など、戦前の諸条約の無効も確認し、韓国を朝鮮半島の唯一の合法政府と認め、日韓両国が国交正常化し、両国で締結した「請求権・経済協力協定」では、請求権問題の「完全、且つ、最終的解決」を確認した。
 
15年にわたる交渉の末に、調印に漕(こ)ぎ着けた「基本条約」において、総額8億ドル(無償3億ドル+政府借款2億ドル、民間借款3億ドル)の援助資金と引き換えに、韓国側は請求権を放棄した。
 
ところが、歴代の韓国政権が、「徴用工」の問題が「協定」の対象に含まれると認定してきたにも拘らず、2018年、韓国大法院(最高裁)の判決は、植民地時代の韓国人の慰謝料の個人的請求権を、「日韓基本条約」の付随協約・「請求権協定」の枠外に置き、その「不法な植民地支配」という範疇をマキシマムに広げ、認定してしまったのだ。
 
まるで、世論の動向で判決が決まるとさえ言われる、「国民情緒法」という韓国司法の風潮をトレースするようだった。
 
だから、「請求権協定」に反するのは明白な韓国大法院の判決が、「国民情緒法」を強く印象づけたのは免れ得ないと言える。
 
この判決の破壊力は、戦後の日韓関係の法的基盤を根柢から反転した事実によって、事態の深刻さを炙(あぶ)り出してしまったことにある。
 
我が国が、個人の請求権が消滅していない事実を認めるのは吝(やぶさ)かでないが、「請求権協定」の存在の有効性によって、個人の請求権の行使は不可能なのだ。
 
韓国政府もまた、国内法を制定して,元徴用工に補償してきたという経緯がある。
 
リベラルの盧武鉉ノ・ムヒョン)政権時代にあっても、元徴用工への補償は協定の対象に含むという見解をまとめ、追加支援も実施したのである。
 
また、「慰安婦財団解散」も深刻である。
 
2015年12月28日、日本政府(岸田文雄外務大臣)と韓国政府(尹炳世=ユン・ビョンセ外交部長官)が、ソウル特別市において、「慰安婦問題日韓合意」を発表し、「日韓間の慰安婦問題が最終的、且つ、不可逆的に解決されることを確認する」と表明した。
 
慰安婦を対象とする支援事業を行う、韓国の「慰安婦財団」=「和解・癒やし財団」に、韓国側の強い要請に応じて、日本政府が10億円を拠出するに至る。
 
かくて、元慰安婦47人中、36人(数字は不分明)が、一人につき1億ウォン(1ウォンは0.1円だから、1億ウォンは1000万円)の支給を受けたとされるが、2017年5月に大統領となった文在寅ムン・ジェイン)政権が、卓袱台返(ちゃぶだいがえ)しを敢行する。
 
日本政府が拠出した10億円に相当する資金を投入することで、全ての元慰安婦に満遍(まんべん)なく、且つ、心置きなく受領できる体制を整備する。
 
慰安婦問題日韓合意」が、根柢から全否定されたのだ。
 
合意の骨抜きが狙いだからである。
 
日韓の溝が一層、深まることが予想される卓袱台返しのインパクトは、日韓関係の中枢を自壊させる不安を生み、視界不良の歴史的状況性を炙(あぶ)り出してしまったのである。
 
 
2  「神経症」と「心身症
 
 
韓国人と日本人の「精神性」の違いを思い切り主観的に書くが、韓国人は「神経症」、日本人は「心身症」というのが、私の考えである。
 
―― 以下、相互に重なり合う特徴を有しながらも、両者の差異も目立つ、「神経症」と「心身症」の違いについて言及していく。
 
神経症」と「心身症」の違いを結論的に要約すれば、以前は、「不安神経症」とネーミングしたフロイトの影響で「ノイローゼ」と呼ばれていた事実で分るように、「神経症」は何某(なにがし)かのストレスに起因する「心の病」(「心身の機能障害」)であるのに対し、「心身症」は何某かのストレスに起因する「身体疾患」である。
 
心身症」も「神経症」も、何某かのストレスに起因するという一点で共通するが、厳密な差異を見せる訳ではないものの、その主症状の様態が、「精神」と「身体」という形で発現させる。
 
「身体疾患の中で、その発症や経過に心理社会的因子が密接に関与し、器質的ないし機能的障害が認められる病態をいう。ただし神経症うつ病など、他の精神障害に伴う身体症状は除外する」
 
これが、心身症を専門にする我が国の、「日本心身医学会」による「心身症」の定義であり、あくまでも、「身体の病気」であることが明示されている。
 
また、1980年のDSM-III(第3版)では、「神経症」という伝統的概念は廃止され、近年では、社会的適応の不調から「不安障害」と呼ばれているが、幻覚や妄想が含まれていないので、「精神病」と切れて、その主症状には、パニック障害強迫性障害(「洗浄強迫」など、同じ行為・思考を繰り返す)・解離性障害(自己同一性の剝落で、「ヒステリー」も含まれる)・心気症(DSM-5では、「病気不安症」など)等々。
 
また、「心身症」の「身体疾患」には、胃潰瘍・十二指腸潰瘍・過敏性大腸症候群・気管支喘息・偏頭痛などが発現する。
 
要するに、「心」の不調が起因する「心身の機能障害」か、或いは、「身体疾患」を発現する特徴的な症状の違いであるということ。
 
大雑把(おおざっぱ)に言うと、これが「神経症」と「心身症」という疾病の違いである。
 
かくて、ハードルが高い「神経症」は精神科、「心身症」の専門科が「心療内科」ということになる。
 
 

心の風景 韓国人は『神経症』・日本人は『心身症』 ―― その折り合いの悪さ」よりhttps://www.freezilx2g.com/2018/12/blog-post.html