2011-01-13から1日間の記事一覧

丹下左膳余話 百萬両の壷('35) 山中貞雄 <飄々たる者たちの長閑なる振舞い―「絶対英雄」の対極として>

問題のその壷は、屑屋の隣に住む子供の安吉の金魚鉢に変わっていた。その安吉の父親、七兵衛は遊び人で、夜毎に矢場(注2)に出入りしていた。その矢場の女将はお藤といい、しばしば客の要請に応えて小唄を三味線で語り弾くことを得意にしていた。この夜も、…

北条民雄、東條耿一、そして川端康成 ―― 深海で交叉するそれぞれの〈生〉

1 「おれは恢復する、おれは恢復する。断じて恢復する」 「人生論的映画評論」の「小島の春」の批評の中でも書いたが、北條民雄(写真)の「いのちの初夜」の中の一文をここでも抜粋したい。(なお本稿では、多くの引用文があるため、ハンセン病患者を「癩…