2011-01-16から1日間の記事一覧

「幸福の最近接領域」―― 自我をスモール化した若者たちの戦略の行方、或いは、覚悟なき「絶対依存」の冷厳な現実を直視して

1 未知のゾーンを広げてしまった厄介さ 「幸福の最近接領域」とは私の勝手なネーミングで、これは発達心理学で著名な、旧ソ連のヴィゴツキー(写真)の「発達の最近接領域」という概念から借用したものだ。 ヴィゴツキーは主著「思考と言語」(上/明治図書…

(人生論的映画評論/幻の光('95) 是枝裕和 <「対象喪失」―― その埋め難き固有性を吐き出して、拾い上げて>」)より抜粋

本作の主人公、ゆみ子はその人生の中で、過去に二度、決定的な対象喪失の危機を経験し、その自我に埋め難いほどの空洞感を作り出してしまった。深甚な対象喪失によって作り出された名状し難い空洞感を埋めるには、彼女の場合、別な新しい人格との遭遇を介し…