2011-02-23から1日間の記事一覧

海を飛ぶ夢('04) アレハンドロ・アメナーバル  <「生と死への旅」という欺瞞性>

ラモン・サンペドロ。 これが映像の主人公であり、同時にスペインに実在した人物の名である。 彼は20代半ばに、自宅近くの岩場から引き潮の海に飛び込み、浅瀬の海底に強打し、脊髄損傷による四肢麻痺患者となった。この絶対的自由を奪われた生活が30年…

ミラーを拭く男('03)  梶田征則  <カーブミラーの光沢が放ったもの>

1 ミラーを拭く男 宮城県の、とある町の県道。 そこに一人の男が仰向けになって倒れている。意識を失っている状態である。傍には脚立が一つ転倒していて、ガードレールには男のものらしいサイクリング車が横付けになっていた。道路には、これも男のものらし…

父、帰る('03) アンドレイ・スビャギンツェフ  <母性から解き放たれて>

1 最も屈辱的な一日が閉じていって ―― 7日間で語られる映画の、その印象深いストーリーラインを追っていこう。 【日曜日】 5人の少年がいる。 眼の前には、広大な海と思しき水辺が広がっている。飛び込み台には、4人の少年が水着姿で下を見ている。既に…

スウィート ヒアアフター('97)   アトム・エゴヤン <コミュニティの治癒力によるグリーフワークの遂行>

これは、長い時間を要すれば、コミュニティが内側に持つ固有の治癒力によって、「対象喪失」という「不幸」に対するグリーフワーク(悲哀を癒す仕事)が遂行されていくかも知れないにも関わらず、その類の「不幸」と無縁に、「他人の不幸」を金銭に換算する…