2011-02-28から1日間の記事一覧

ドイツ零年('48)  ロベルト・ロッセリーニ <リアリズムとの均衡への熱意の不足 ―― 「葛藤」描写の欠損の瑕疵>

「明日、父が退院します。でも、食べさせる物がありません。父のために何をしたらいいでしょうか」 かつて「ナチズム」を教え込まれた元教師に、本作の主人公であるエドムント少年が相談したときの反応は冷淡なものだった。 「何もできんさ。健康な者さえ楽…

イヴォンヌの香り('94) パトリス・ルコント <〈生〉と〈性〉が放つ芳香に張り付く固有のエロティシズムの自己完結感>

名画と呼ぶには相当の躊躇(ためら)いがあるが、説明しない映像のイマジネーションのみで勝負した、如何にもパトリス・ルコントらしい印象深い映画を要約して見る。 ―― 女の全身から放射されるフェロモンに誘(いざな)われて、男たちが群がって来た。 群が…

理由なき反抗('55)  ニコラス・レイ <「父に迫る息子、頭を抱える父」から「縋りつく息子、受容する父」への変容>

1 「古き良き時代」の映画の範疇を逸脱しない健全さ 誰が観ても分りやすいシリアスな映画が、量産された時代があった。 主題も、それに対する答えも同時に表現される「映像」に馴染んだ時代があったのだ。 「フィフティーズ」(「古き良きアメリカ」の原点…