2011-03-14から1日間の記事一覧

コンフィデンス 信頼('79) イシュトヴァーン・サボー  <時間を特定的に切り取れる女、切り取れない男>

第二次世界大戦末期の、ハンガリーのブタペスト。 厳冬のその日、一人の女が空席だらけの映画館で、ニュース映画を観終わって、外に出た。ブルーの映像の画面に映し出されたその町には、人っ子一人いない。異様とも思える風景だ。そんな風景の中で、突然、一…

嘆きのテレーズ('52) マルセル・カルネ  <リアリズムによって貫流する、「人間ドラマ」の本質を拡散させたサスペンス性の陥穽>

男と女の運命的な出会いが、そこにあった。 男の名は、ローラン。女の名は、テレーズ。 イタリア人であるトラックドライバーのローランが、殆ど間髪を容れず、人妻のテレーズ言い寄った。 「君と会うのは2度目だ。男と女の出会いは、これで充分だ。俺の財産…

伊豆の踊子('74) 西河克己 <「孤児根性」という寂寥感・劣等感を越える旅路 ―― 本作で削られた原作の本質性>

本作の「伊豆の踊子」は、「アイドル映画」としては、取り敢えず不合格ではなかったと言えるだろう。 「憧憬・熱狂・スター・清純・偶像・愛玩」等々と言った、「アイドル性」を保有する映画としての「アイドル映画」の要件を満たしていると思えるからだ。 …

ドレッサー('83)   ピーター・イエーツ <「宮廷道化師」としてのアイデンティティと誇りを賭けて>

本作は、第2次大戦下のドイツ軍の空襲の中で、有数のシェイクスピア劇団の老座長であり、自己中の名優である男に一貫して仕え、件の名優にとって唯一の「前線」である絢爛たるステージにおいて、名優に100%のパフォーマンスを表現してもらうために影と…