2011-03-31から1日間の記事一覧

シン・レッド・ライン('98)  テレンス・マリック <「一本の細く赤い線」――状況が曝け出した人間の孤独性についての哲学的考察>

1 「人間は眼を瞑り、必死で自分を守る。それしかできん・・・・」 ―― 「シン・レッド・ライン」という、あらゆる意味で鮮烈で根源的な映像の背景となった、「ガダルカナル戦」についての言及は後述するとして、まず映像の中に入っていこう。 「戦場」という、不…

稲妻('53) 成瀬巳喜男  <離れて知る母の思い>

映画の舞台は東京下町、葛飾区金町。 それぞれ父親が違う子供たち。その母親おせいが浦辺粂子。 彼女は彼女なりに一生懸命夫に尽くしてきて、厳しい生活を切り盛りしてきた。四人の子供たちへの愛情も特段変わらず、彼女なりに懸命に育ててきた。それにも拘…

エレファント('03)  ガス・バン・サント  <日常性と非日常性の、激突の瞬間に解き放たれた肉声>

1 黒ずんだ雲が染め抜かれて ミルク色の柔和な雲がゆったりとしたリズムで流れていき、次第にそれがブルーに染められて、最後には濃紺に変色し、そして闇の黒を映し出した後、そこに突然、闇とは対極の眩い黄色が映像を支配した。それは、晩秋のシグナルと…