2011-05-04から1日間の記事一覧

津軽じょんがら節('73)  斎藤耕一  <「外部装置」に捩じ伏せられた物語構成の脆弱さ>

1 自我と〈生〉のルーツを持たない男の空洞感が埋められたとき 誰から生まれ、誰に育てられ、どこで育ったかという、自我と〈生〉のルーツを持たない男にとって、内側に巣食う空洞感を曖昧にさせてくれる場所で呼吸を繋ぐことで、そこに、その男の応分に見…

草の乱('04) 神山征二郎監督  <善悪二元論を突き抜けられない革命ロマンの感動譚>

1 「奥武蔵・秩父」という固有の存在性 今から30年もの昔、自由民権運動に強い関心を持っていた私は、地域でささやかな文化運動に挺身しながら、関東近県の町村を歩き回っていた。 在野の研究者を気取って、メモ帳片手にオーラル・ヒストリー(聞き書き)…

ギルバート・グレイプ('93)  ラッセ・ハルストレム <「埋葬」と「再生」、或いは、紛う方ない「若き父性」の立ち上げ>

1 移動への憧憬と定着への縛り 「エンドーラ。僕らの住む町だ。冴えない町なんだ。いつも同じ表情で何も起こらない。僕の働く食料品店。今や、国道沿いのスーパーに客を取られてしまった。これが我が家。パパが建て、今は僕が修理を受け持つ。弟の寿命を1…