2012-05-21から1日間の記事一覧

ミツバチのささやき('73) ヴィクトル・エリセ <「家族の再生」の物語に軟着させた「非武装なるイノセント」の復元力>

1 「幼児」と「児童」の見えないボーダーが駆動させた「善きもの」への好奇心 「なぜ、怪物はあの子を殺したの?なぜ、怪物も殺されたの?」 「怪物もあの子も殺されてないのよ。映画の中の出来事は全部嘘だから。私、あの怪物が生きてるのを見たもの。村外…

禁じられた遊び('52)  ルネ・クレマン <愛情対象を喪失した幼女の悲哀の儀式>

本作のストーリーラインの言及に入る前に、この映画と付き合うに際して重要な視座を持たねばならないと考えている事柄がある。 それはこの映画が、幼児を主人公しにした「絶対反戦」のメッセージをもって語られることで、全く文句の付けようがない見地に立っ…

蝶の舌('99) ホセ・ルイス・クエルダ  <穏やかさを剥ぎ取られた「風景の変色」>

少年モンチョは不安な夜を過ごしていた。その思いを、就寝中の兄に吐き出さざるを得なかった。 「アンドレス、アンドレス、起きて」 「どうした?」 半醒半睡状態の兄は、その顔をベッドに埋めながら答えた。 「学校で叩かれた?」 「もちろんさ」 「行きた…