2012-12-06から1日間の記事一覧

ゴーストライター('10)  ロマン・ポランスキー <起こり得ることだと思わせるリアルの仮構性>

1 観る者の不安心理を継続的に惹起させるパワー 物語の中で展開される予測し難い状況に不安心理を継続的に惹起させるパワーを持つ映画が、サスペンス映画の王道とすれば、本作は、褒め殺し的に言えば、サスペンス映画の王道をいく作品と評価すべきなのだろ…

海を飛ぶ夢('04) アレハンドロ・アメナーバル <「生と死への旅」という欺瞞性>

1 「非日常の日常」である現存在性 私は脊髄損傷患者である。 「ブラウン‐セカール症候群」(脊髄の片側半分が損傷されて、出来する症病)という名で説明される疾病と付き合って6年。 私の場合、不全麻痺による「中枢性疼痛」に日常的に苦しめられていて、…

善き人のためのソナタ('06)  フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマル <スーパーマンもどきの密かな睦み―或いは、リアリズムとロマンチシズムの危うい均衡>

1 「善き人」に変容していく心理的プロセスの跳躍(1) 本作への私の感懐を、もう少し具体的に書いてみる。 結論から言って、作品の出来栄えは決して悪くない。充分に抑制も効いている。テンポも良い。映像の導入も見事である。 そして何より、本作の背景…