2013-03-14から1日間の記事一覧

ニーチェの馬(‘11)  タル・ベーラ  <内側で緩やかに、しかし確実に、〈死〉に向かって匍匐している負の鼓動の実感>

「(長回しは)私の映画の言語です。俳優が逃げることができずに状況の囚人となるのです。(略)こういう長回しの映像を見ている観客はストーリーを追うのではなく、空間、時間、人間の存在を追い、それをすべて集約してその場で起きていることを感じる。そ…

八月の鯨(‘87) リンゼイ・アンダーソン <「八月の鯨」という、解放系の空間に駆動させる老姉妹の心理的推進力>

1 「老境」に対する基本的スタンスが異なる老姉妹 これは、「約束された死」への境遇が実感的に迫る、「老境」に対する基本的スタンスが異なる老姉妹が、それによって生じる葛藤の心理的補完を、一方が他方に依存的に求める「対比効果」(対比によって、一…

実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)('07) 若松孝二 <『実録』の名の下で希釈化され、削られた描写が照射した『事件』の闇の深層>

「実録」と銘打った物語の後半のクライマックスである、「あさま山荘」を描いた一連のシークエンスから掘り起こしたい。 あまりに著名な事件だから詳細な説明は省くが、そこに5人の「革命戦士」がこもっていたことは、当時を知る者には鮮明な記憶をなお残し…