2013-04-25から1日間の記事一覧

リアリズムの宿(‘03) 山下敦弘 <癖になるほど面白いオフビートコメディの最高傑作>

序 癖になるほど面白いオフビートコメディの最高傑作 何度観ても、笑いを堪えられず、ラストの「小さな救い」では心を打たれ、涙を誘われてしまう80分間の短尺の映画に詰まっているものは、オフビート感満載の滋養ある青春ドラマの訴求力の結晶である。 ひ…

僕達急行 A列車で行こう(‘11) 森田芳光 <好き放題の伏線的なエピソードの暴れ方が壊したコメディの強度>

1 「疑似コミュニティ」の広がりという、「オタク」の閉塞感を突き抜けて開かれたゾーン この映画によって癒される人々がいて、商業的に成功すれば、この上なく悦ばしいことであるだろう。 しかし、映画批評という視座で捕捉した場合、この映画のコメディの…

雨月物語('53) 溝口健二  <本来の場所、本来の姿――「快楽の落差」についての映像的考察>

1 夜の琵琶湖の不吉 「『雨月物語』の奇異幻怪は、現代人の心にふれる時、更に様々の幻想をよび起す。これはそれらの幻想から、新しく生まれた物語です」 これが、映画「雨月物語」の導入となった。 「戦国時代、ある年の早春。近江国琵琶湖の北岸・・・」とい…