2013-07-28から1日間の記事一覧

空中庭園(‘05) 豊田利晃   <「逆オートロック」の「理想家族」という絶対規範の本質的矛盾>

1 「逆オートロック」の「理想家族」という絶対規範の本質的矛盾 「人類の家族は、人類特有の孤独と死の恐怖を解消できないまでも、いくらかは軽減するために発明された文化装置であると思われる。・・・依然として、孤独と死は個人の最大の恐怖であり、この恐…

父、帰る('03)  アンドレイ・スビャギンツェフ  <母性から解き放たれて>

序 謎解きの快楽にも似た知的ゲームの内的世界で シンプルな作品ほど、しばしば難解である。 娯楽作品ならともかく、その内容が厳しく含みの多い作品であれば、当然そこに何某かの形而上学的な問題提起が隠されていると見るのが自然である。観る者はそこに隠…

ブラック・スワン('10) ダーレン・アロノフスキー  <最高芸術の完成形が自死を予約させるアクチュアル・リアリティの凄み>

1 「過干渉」という名の「権力関係」の歪み かつて、バレエダンサーだった一人の女がいる。 ソリストになれず、群舞の一人でしかなかった件の女は、それに起因するストレスが昂じたためなのか、女好きの振付師(?)と肉体関係を持ち、妊娠してしまった。 …

八日目の蝉('11)  成島出  <「八日目」の黎明を抉じ開けんとする者、汝の名は秋山恵理菜なり>

1 個の生物学的ルーツと心理学的ルーツが乖離することで空洞化した、屈折的自我の再構築の物語 本作は、個の生物学的ルーツと心理学的ルーツが乖離することで空洞化した自我を、日常的な次元の胎内の辺りにまで、深々と引き摺っているような一人の若い女性…