2013-08-04から1日間の記事一覧

小間使の日記(‘63)  ルイス・ブニュエル   <心の「真実」の姿を表現した決定的行為、或いは、「閉鎖系世界」の枠に閉じ込められていく「自在な観察者」>

1 人の心の分りにくさ 人の心は定まらない。 その時々の状況の中で、どのようにでも振れていくし、動いていく。 特定の例外を除いて、そこで振れた行為の全ては、その人間の心の「真実」の姿の一端である。 その行為によって歓喜し、沸き立つような愉悦感を…

昼顔('67) ルイス ・ブニュエル<予約された生き方を強いられてきた女の、不幸なる人生の理不尽な流れ方>

1 「昼顔」という非日常の異界の世界で希釈させた罪責感 冒頭のマゾヒスティックな「悪夢」のシーンによって開かれた映像は、本作のテーマ性を包括するものだった。 「不感症さえ治れば、君は完璧だよ」とピエール。夫である。 「言わないで。どうせ治らな…

アンダルシアの犬('29)  ルイス・ブニュエル サルバドール・ダリ <「殺人への絶望的かつ情熱的な呼びかけ」というライトモチーフの破壊力>

1 第一次世界大戦のインパクトが分娩したもの ヨーロッパを主戦場にした第一次世界大戦 ―― それは、開戦当時の予想を遥かに超える膨大な犠牲者を生み出した悲惨な戦争だった。 2000万人近くの死者を生み出した、このサバイバルな消耗戦を終焉させたとも…

欲望のあいまいな対象('77) ルイス・ブニュエル<「自己完結点」を持ち得ない、無秩序なカオスの世界に捕捉されて>

1 欲望の稜線を無限に伸ばして疲弊するだけの人間の、限りなく本質的な脆弱性 アルカーイダのテロネットワークの存在を見ても分るように、いつの時代でも、テロの連鎖はやがてテロそのものが自己目的化し、肥大化し、過激化していく。 本作の中で描かれたテ…